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ついてない日

2008年9月19(金)
僕が医者になりたての頃はまだ瀬戸大橋がなかったので、本州で医学会がある時にはフェリーに乗った。フェリーが桟橋に着くと、ドーンと低い音がして乗客は皆つんのめり、どんな偉い人でもいったんは大きくオジギをさせられたものだ。いまや悪しき公共事業の代表格のように言われる瀬戸大橋だが、僕らにとっては大きな支えだ。ある日、その瀬戸大橋を走るマリンライナーで高松への帰路についていた。蒸し暑い日で、しかも乗車率は120%くらいだったが、誰かの携帯電話が鳴り始めた。携帯はカバンの中に入っているようだが、音量が大きいのでよく聞こえる。皆イライラし、無言で犯人探しを始めた。どうも僕の足下に置いてにあるカバンの中で鳴っているらしい。カバンの持ち主は、前に座っているお爺さん。やがて、そのお爺さんの娘さんらしき人が小声で『じいちゃん、携帯が鳴っりょるで』と耳元で囁いたが、何を思ったかこのお爺さん、『ワシとちがう!、この人じゃ!』と大きな声で僕を指さしてしまった。『エエっ!?』とびっくりしたとたん、携帯は鳴りやまった。娘さんとお爺さんは何事もなかったかのように黙りこんでしまった。高松駅に着くまでの半時間ほど、僕が周囲の冷たい目にさらされたのは言うまでもない。誰にでもさんざんな一日はあるものである。





2018.12.10 by NOZAKI SHIRO
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